るんぺんパリ【RunPenParis】

詩・詩集・ことばをデザイン・アート・写真 るんぺんパリ【RunPenParis】 以前は「Kマーホ」の名で活動(1999-2002)、詩集「トイレの閃き」「テレビジョン」「おしりとサドルが あいますか」「マガサス星人」「コールサック」「眠立体」6冊の詩集を出版して活動休止。 令和元年(2019)に、「るんぺんパリ【RunPenParis】」の名で活動を再開。 三重県伊賀市(旧上野市)出身 静岡県在住

夏の事は 夏に聞かないと

この暑さを忘れてしまっている事が多い。いつも。

まだ夏じゃないよねと繰り返してた7月あたりには想像して無かった暑さがやってきては夏の事を思い出す。

なんだっけな。どれにしようかな。

 小学生の頃、近所の友達がプールへ行かないかと誘ってきた。その子のお父さんが送ってくれるというので、もう一人の友達3人と送ってもらった。3人でプールを満喫して満足して、またその子のお父さんが迎えに来てくれた。そして、その帰り道が少し違ってた。話によるとプールまで送り迎えする交換条件として、見知らぬ駐車場の草抜きという話が突然言い渡された。突然、そこに降ろされた3人は、自分の背丈にも近い雑草に立ち向かい、蚊に刺されまくり、包丁草に切られ、西日の強いカラカラの駐車場はプールに行った気分すら無くなり、もう無口になって草抜きと戦った。こんなに暑い夏は経験した事が無かった。3人の体は蚊に襲われ、もうかゆいという言葉も出ずに家路についた。友達のお父さんは満足した顔で、またよろしくと言っていたが、3人の気持ちは一致した目をしていた。もう二度と行かない。

 中学生の頃、夏の伊賀上野の城下町は銭湯がにぎわっていて、それぞれの通りにぽつぽつと銭湯があった。いつもは一人で銭湯めぐりをしていたが、その日は一人の友達と行く約束をした。そうなると二人が行った事の無い銭湯を目指して夏の冒険がはじまる。その銭湯は、その地区の人しか絶対入らない感じの銭湯で比較的新しく、そこに行く事にした。建物は比較的にきれいで、脱衣所も新しかった。ただ何となく異様な雰囲気がある銭湯だった。銭湯に入っている人たちは職人系の人が多く、新入りの二人がいつものくつろぎの環境を乱している視線が飛んでくる。洗い場の位置も決まってる感じが強く、なんと無く洗っていたら、常連さんの一人に急に怒られた。ひと声だけ、何かを言われた。それが何か覚えていないが、もうすぐにその銭湯を出た。こんなに汗をかいて出た銭湯は初めてで、二人の気持ちは一致した目をしていた。もう二度と行かない。

 夏の事は夏に聞かないと思い出せない事が多くて、夏の伊賀上野の花火大会はいつも誰かと行きたいと思うけど、実際は暑くてそんな所じゃない。遠くで一人で見る花火がいちばん夏と話せるいい機会なんだ。うちわを持って、自分の好きな風を起こして。

それから、もちろん、大好きなりんご飴は買って帰るよ。

f:id:RunPenParis:20200814165051j:plain