学校が昼までで終わって、昼からどうしようかななんて自転車でいつもの上野天神さんまでぼんやりしながら。お昼は同級生がバイトをしていたほか弁屋でからあげ弁当か、それともチキン南蛮弁当にしようかとこの二択で結構迷う。
カラカラと暖かく、退屈な時間に帰ってやる事と言えば、音楽を聴くか、録画した番組を見るかで、まあその前にお昼は重要であって、その日のお昼はチキン南蛮弁当に決めた。銀座通りにあるその小さなほか弁屋はその日はポツンと静かだった。
なんとなくいつもは他のお客が居たりもしたが、その日は同級生も居ない感じだったけど、チキン南蛮弁当がもう頭から離れなくなっていたから、勢いはついていた。
その日のほか弁屋はいつもと違った。注文の対応に出て来てくれた子が見た事も無い子で、何だか不思議な感覚になった。何か分からないけどチキン南蛮弁当にして良かったという感覚が出て来て、少し時間がかかって出てきたそのチキン南蛮弁当が、とても貴重な物に見えてきて、その日は家に帰ってから、ぼんやりしてお腹が満たされた。
次の週にほか弁でバイトしてる同級生と話をした、あの日はバイトが休みで居なかったらしい、その流れから、あの日に見たあの子の事を聞いて見た。あの子は一つ年下の名張の学校に通っている子らしく、なんとなく詳しく知りたくなって来て、同級生にあの子と会う約束をお願いした。
何が気になってきたのかはよく分からないけど、なんとなくまた会いたいとか、会えたらいいなとか、そういえば小学校の頃も、中学校の頃も、そういう感覚が出た子は同じ学校の子だから、毎日会う事だから気にならなかったけど、このチキン南蛮弁当の出会いは、もしかするともう会えないかもと思ったのかもしれない。
同級生のおかげで、あの子と二人で会う事が出来たその日は、なぜか趣味も何もかもが合わない事が楽しくて盛り上がったような気がした。その日に付き合って欲しいと告白して、返事は一週間後だったと思う。
その後は、クリスマスにバイトをキャンセルして長島の遊園地に行った。年が明けて朝に学校を休んだなんて電話があったから一緒に学校をさぼった。いつも会った時はあの子は歩きで、家の近くまで送っていった。その帰り道はいつも自転車で気持ちいい風と遊んだ。
あの子が自転車を乗った所を見た日が最後の日だった。カラカラでもう寒い日だった。